ぼくはもうデザイン組織のマネージャーになれるかもしれない

このブログポストは エンジニアリングに興味があるデザイナー、デザインに興味があるエンジニアのカレンダー | Advent Calendar 2021 - Qiita レーン2 の 21日目の記事です

これは煽り気味のタイトルでこれまでの自分の経歴とデザインへの関わり方を紹介しつつ、 UI という文脈でのエンジニアが持っているといいかもしれないスキルを紹介するというポエムです

自己紹介

古くはコーダーと呼ばれていた時代から Web フロントエンドエンジニアに携わり、途中アプリエンジニアをやりつつ今は現場 & 技術顧問的な立ち位置で仕事をしている生粋のフロントエンドな人間なんですが、先日ふと自分のキャリアを振り返ってみるとなぜかすべてのキャリアでデザイン関連のマネジメント的な仕事をしてきていました。なぜだろう

経歴1 社会人大学で UX デザインを学び社内で横断チームを立ち上げる

某通信大手の子会社に就業中に産業技術大学院大学( AIIT )の社会人向け履修プログラム「人間中心デザイン」を受講。ちょうど UXデザインバズワードになりかけのタイミングだった事もあり、社内で意識高い系の人材を集めて企画部主導で部門横断のワーキンググループ的な部隊を作ったりしてました。 UX JAM とかで話したりとかしていたのもこの頃

経歴2 UIデザイナーの採用とチームビルディング

デザイナーが抜けたアプリのデザインファイルをメンテナンスしつつ、新しい UI デザイナーを採用。過去のデザインの引き継ぎとメンタリング、 UI デザイナーとしての立ち上がり支援などを実施。作った人がすでにいない Sketch ファイル渡された時はとんでもない所に来たと思ったかもしれないけど、結構メンテナンスしやすく立ち上がりやすい環境作れたんじゃないかなぁ

経歴3 フロントエンド + デザインチーム(40名)の GL

デザイン全部見ていた事業部長とリードの UI デザイナーが抜けたタイミングで後任の GL に。事業部長の後釜がグループリーダーってどうゆう事だよ、、、と思いながら、8名程度のデザイン組織とビジュアルデザインとUIデザインのチームとして組成。UIデザインチームはジュニアのみでチームで働いたことがなかった状態からワークフローやレビューの整理、ガイドラインの運用などをマネージメントしてました

経歴4 デザインシステムの運用立ち上げ

デザイナーとエンジニアの連携がうまく回っていないということで、解決策としてデザインシステム的なのを一緒に作りますか、というプロジェクトを発足。手を動かす人はたくさんいるのと、外部顧問という立ち位置もあって内容にはあまり口を出さずみんなで議論しつつ進んでいます(といいつつデザイントークンとかの〆る所はしっかりやってます)。迷走しつつも絶賛稼働中

これはもうデザインマネージャになれるのでは???

経歴だけ見るとなれそうじゃないですかね???

生粋のエンジニアがこういった経歴を歩む中で具体的に役立った内容はこんな感じ

ビジュアルデザインができないこと

自分はデザイナーではないわけですから当然ですね。ぱっと見イケてる物を作る能力は絶対にメンバーの方が高いわけです。そこでどうなるかというとその能力へのリスペクトがあるわけですよ。自分ができないからこそ、そのスキルをどうやって組織の中で活かすのかみたいな視点が生まれるし、メンバーが一番自信を持っている部分を 100% 任せられるという点も強いです

IA の知識と理詰めでデザインする能力

じゃあ、評価とか成長とかはどうするのよ、という問題があるわけですが、それは情報設計と理詰めです。デザイナーは感性で考えるからみたいな事をいう人がいますが間違っていると思います。腕の良いデザイナーは本能で情報設計と理詰めをしている。それが分かると情報設計と理詰めで(ある程度)同じ視点で話せるようになります

CSS 設計ができること

急に具体的な話になりましたが、これはどちらかというとシステマチックに文章を構成する能力。という意味合いが強いです。最近デザインシステムが流行っていますが当然のように歴史は繰り返しているわけでそれは CSS 設計です。 CSS 設計できる人はデザインシステム作れるし、デザインシステム作れる人は CSS 設計ができます。どっちかならできると思っている人はどっちもできていないので安心してください

デザインはどうしてもページ単体になりがちですが、全体を見渡して見た目の設計ができる能力はかなり重要かと思います

デザインのウェットな部分への理解

とはいえデザインにおいて理詰めではない部分もあるんですよね。常に言語化できないものがコアな部分に存在しているのだ(良く分からんけど)という意識があるかないかでマネジメントの仕方は大きく変わるしエンジニア視点でデザイナーへの歩み寄り方も大きく違うと思います

自分がちゃんとできていたかいまいち自信はないですが、理詰めを尽くした後にそれでもこっちが良いという感覚についてもちゃんと議論するのは大切だと思います

認知心理学とインタラクションデザインの知識

理詰めをする時には意見に裏付けが必要です。その文字を右に 1px ずらす理由をすぐ言えますか?言えなかったらデザインのマネジメントはできません。そしてWebサービスを作るレベルの話はほとんど認知心理学とインタラクションデザインの基礎で語り尽くされています

インタラクションデザインはエンジニア側のアドバンテージだと思います。多数の組み合わせをきちんと整合性をとってシステム化するのは普通に難しく、デザイナーがやるのかエンジニアがやるのかプロダクト側がやるのか明確になっていない組織が多いです。ここを押さえられると

UXデザインの知識

インタラクションデザインの知識に近いですが、こちらはビジネス側と話す時に役に立ちます。ペルソナとカスタマージャーにマップ、インタビューの仕方や定性評価、ユーザビリティ。実務で体系的に全部使うことはほとんどないと思いますが(※)。知っていると活用できるタイミングはちょくちょく発生してすごい役に立るので、なまくらにならないように磨いておくのが良いです。ちなみにここでいっているのはアカデミックなやつです。 UXデザインの教科書UX原論 を読んでから戻ってくるか、むしろ UX という言葉を忘れた方が幸せになれます

(※)そういうことができる組織で働いてみたい気持ちはある

マーケティングSEO の知識

UXデザインと一緒の項目にしようと思ったんですがいろんな方面から怒られそうなので分けました。デザイナーもエンジニアも作る側の視点に偏りがちです。 IA やインタラクションデザインは少し外側からの視点を与えてくれるんですが、マーケティングSEO の知識は別の角度からの視点を与えてくれます。そしてなにより組織内での影響力が高い。売れるデザインだけに目利きな人がいますが、売れるデザインわかりながらこれまでの項目の視点で話ができると組織内での立ち回りが格段に楽になります

この辺りの人材いないんですよ

なんでこんな経歴になったのかの理由は色々あると思うんですが、自分の趣味嗜好と併せて強くあるだろうなと思うのが「この辺りできる人いなさすぎ」という理由です。いないからやることになるんです

具体的にいうと「システマチックに理詰めでデザインできる UI デザイナー」 or 「 UI デザイナーの意図を読み取ってシステムに落とす能力のあるエンジニア」そして「そういう人材をマネジメントする能力」。多分 IT 業界全体でこれらのスキルを持った人材がいなさすぎて困っていると思うんですが、それ以上に困っているのがこれを目指す人だと思うんです

というのも、即戦力がいない & 即戦力が待遇良く扱われない = なりたい人のキャリアパスがないという状態になっているわけです。「おい、そこの組織。いないって困りながら即戦力を安く買い叩こうとするんじゃない。育てろよ」となるわけです。マニュアル化されてない職人芸的なところあるし、体型的に学ぶのが難しいというのも問題としてあると思います

業界がんばれ

ぼくの強みってもしかしたら「こういったスキルが大事で運用できるよと組織を説得できる能力」だったのかもしれません。難しいし上手くいったわけでもないですが、自分が関わったデザイン系の人材の組織内での価値は高められた自信はあります

ただ、現場からのプッシュは限界もあるし疲弊するんですよね。ぜひ会社や業界側も下から言われるのを待つだけではなく、そういった人材をマネージメントする気概や育てて活用する心意気を持って欲しいと説に思います。

そして、そういう人材になりたいんだけどどうしたらいいか分からん、みたいな人(エンジニア・デザイナーともに)やデザイン組織作りたいけどどうしたらいいのか分からん、みたいな人は声かけてくれたら壁打ちのお相手ぐらいはできるかもしれません

Graphic design will save the world. right after rock and roll does
Graphic design will save the world. right after rock and roll does

くらいのことを iPad に刻印するくらいにはデザインの持つ力を信じてるので、お気軽に声かけてください