今日からはじめるインクルーシブデザイン

これは2015年度履修生の大谷による 産技大人間中心デザインOB/OG Advent Calendar 2018 - Adventar の 2 日目の記事です。

インクルーシブデザインとは

Every design decision has the potential to include or exclude customers. Inclusive design emphasizes the contribution that understanding user diversity makes to informing these decisions, and thus to including as many people as possible. User diversity covers variation in capabilities, needs and aspirations.
すべてのデザイン上の決定にはユーザーを参画させることができます。インクルーシブデザインとは、できるだけ多くの人々にそのプロセスを伝えながら決定に参画してもらうことで、ユーザーの多様性を理解するための手法です。ユーザーの多様性を通じて幅広い能力、ニーズ、および要望に対応することができます。
http://www.inclusivedesigntoolkit.com/whatis/whatis.html

主にアクセシビリティの文脈で、デザインプロセスの上流から実際の利用者(特に障碍を持つ方やマイノリティの方)に参画してもらうことで、より品質の高いプロダクトやサービスを提供しよう、という手法です。

なぜ、インクルーシブデザイン?

The importance of creating inclusive government services - Government Digital Service

アクセシビリティの文脈なので行政サービスなどの分野では多く取り入れられているようです。やることで価値に直結するので分かりやすいですよね。

Accessibility - Apple
Inclusion & Diversity - Apple

ユーザーが多岐にわたる巨大な企業では、該当するユーザーの実数が多いのでビジネス的にも取り組む価値があります。
例えば国内における40才未満のロービジョンの割合は 0.2% ですが、これは1000万個売れる商品であれば1万個分の売り上げに相当します
参考

また、特に障碍を持つ方やマイノリティの方に限ることなく、利用文脈(強い日光の下でスマートフォンを使ったり、片手にギプスをつけている状態でゲームをしたりなど)による利用がしにくいといった不利益の軽減にもなるので、「自分のプロダクトは普通のユーザー *1 しか使わないから」と言い切ってしまえる訳でもありません。

自分たちがやっていること

自分が担当しているのは10〜20代の女性向けファッションメディアなんですが、実際のターゲットユーザーである 20 前後の女性に、動作チェックのアシスタントとして QA アルバイトに来てもらい、毎週行なっている社内向けリリース版を利用して常に最新のアプリで動作確認をお願いしています。

もちろん、デザインの決定に関わってもらっている訳ではないですが、以下のようなメリットがあると思っています。

  • 新しく実装した機能について違和感がないか確認してもらえる
  • 動作確認についても普段使っている状態(持ち方、タッチの仕方、利用の仕方等)で確認してもらえる
  • 普通にデザインなどで困った時に聞ける

フィードバックループを作る

ずっと、事業側としてプロダクトを作ることをやってきて思うので会うが、実際に手を動かすエンジニアやデザイナーに対して「ユーザーを見る」という態度を醸成することが一番難しくて大切なことだと思っています。
特にプロダクトのリリースサイクルの間隔がどんどん短くなっているなか、常に隣にユーザーのお手本がいて毎回のイテレーションになんらかの形でその意見が反映される状態は 強い プロダクトを作るために理想的な環境ではないでしょうか。
逆にユーザーを見ないイテレーションを 10 回実施して、 1 回だけユーザー調査をじっくり行うイテレーションを一回挟むという方法にどこまで、有効性があるでしょうか?

ちょっと脱線して、シリコンバレーの強さとは

ちょっとだけ話がずれますが、アメリカは多様性の国ですよね。
もちろんそれだけが理由ではないと思いますが、プロダクトを作るにあたって自然に多様な価値観を持つチームが自然に出来上がる環境というのはシリコンバレーから新しい価値が生まれる一因にはなっているんんじゃないかなぁ。

まずは一歩、そして

「これがインクルーシブデザインか?」と問われれば違うのだと思います。
ですが、操作困難性という意味で「高校に入るまでスマホを買ってもらえなかった女の子」と「ロービジョンの女の子」にどんな違いがあるのでしょうか?

大事なのはあなたの思い描いているユーザーと実際のユーザーは違うということ、そしてその先に色々な状況や立場のユーザーがいるということを理解することです。
そのために、まずは目の前にユーザーがいる、ユーザーと一緒にプロダクトを作っている状態をを自然だと思えるようになることを最初の一歩にするために、(とても広い意味での)インクルーシブデザインをはじめて見ませんか?

*1:「普通」と言ってしまっている時点でユーザーコンテキストを理解していない訳ですが