UXデザインをやらないエンジニアがなぜ UXデザインを大学で学び、なにを得たのか

これは2015年度履修生の大谷による 産技大人間中心デザインOB/OG Advent Calendar 2018 - Adventar20日目の記事です。
今年の 11月に、同学のユーザビリティテスト演習にメンターとして参加した際に現役生のみんなから聞かれたので自分の中でも明確にしておこうと書いてみます。

やってないの?

元々はフロントエンドエンジニアで今はアプリエンジニアで10代〜20代の女性向けアプリを作っています。開発側のPMとして機能設計とかIxDとかプロダクト設計とかUIのレビューとかジャッジとか一通りやってます。逆にいわゆる UXデザィナー と言われて想像するような UTの設計やサービスデザイン的なことはやっていません。

なぜ学んだのか

同じ会社の先輩が通って実際に授業の内容を仕事で活かしていたのを見たのが直接のきっかけです。
その時に UXデザインの片鱗には触れたんですが、その後のにバズワードとしての「UXデザイン」が流行ってきた時になんか違うぞ?と感じて、これは一度ちゃんと学ばないと!という思いから受講を決めました。
当時は SEO なんかをやっていたのですが、 SEO って UXデザインじゃね?って Google も言っていました。ちょうど色々な職種が暗黙知で持っていたナレッジに対して UXデザインという名前で掘り起こしをしていたタイミングだったのかなぁ、と思い返すと思えてきますね。

学んで役に立っていること

同じ事を考えている仲間たちと出会えた事

こんなにも熱量を持ってワークに取り組むチームってそれまでの仕事ではなかったんですよね。 利害関係がないので、「良いアウトプットを出す」ということに 100% 振ったチームと半年過ごすというのはここだけだし、それを理想像として体感していると、職務での自分のチームをどうやってそこに持って行こうか、、、みたいな事を考えたりできるので本当に良い体験でした。

また、先生方含め同輩、先輩、後輩、みんな近しい業界にいて課題をもって悩みながら仕事や個人活動をしているのを見るのはとても素晴らしいロールモデルになるし、そんな人たちが(自分も含め)色々なところでコラボレーションが発生していのは本当に楽しいですよね。もちろんただただくっちゃべって飲んだくれてる仲間もいて、すごく背中を支えてもらえている感があります。 Web業界良いなぁって(割)

ユーザーを中心に考えることがすべての行動の起点になっていること

エンジニアとしていろんな人と話すタイミングはまぁ普通にあるんですが、結構発生するんですよね。空中戦が。
その時に、「まずユーザーを考える」という所作が身についていると、議論をテーブルに引き戻しやすくなります。

また、他の部署と会話するときも、それぞれ各部署がプロフェッショナルな訳ですが、「ユーザーにとってどういうことですか?」という話をする事で、同じ目線でイシューに向かう事ができます。

関係者もユーザーとして設計できるようになったこと

どんなシステムにも社内のユーザーがいる訳です。コンテンツを更新するのもユーザーだし、事業計画をたてるマネージャーもユーザーです。
全員をユーザーとしてプロダクト開発をデザインする事で、プロダクト単体でできることよりもずっと広い可能性の中で開発できるようになった気がします。

また、開発をしていると「やらない事」を決めるのって大事なんですが、社内の全員をユーザーにすえるとその判断だけで無限に時間がかかります。
その前に各部署をペルソナのように扱って、ターゲットユーザーを設定する事で「なにをやらないか」の判断がしやすくなります。
「Aさんがやって欲しいって言ったけど、優先度あげられないなぁ」から「その機能はユーザーがいない(ターゲットではない)からやらないことにしよう」って感じで判断すれば良いわけです。

ストーリーで物事を考えることができるようになったこと

これは本当に大きいんですが、技術やビジネス、マーケティング起点でなにかを実装するという話になると、機能単位での設計が始まり、最終的にチグハグなものができがちです。
ストーリーとコンテクストというものをみっちりと叩き込まれたおかげで、「機能要件からストーリーを構築する」「ストーリーからビジネス要件を検証する」「マーケティングが欲しいものをストーリーで整理する」みたいなことがスムーズにできるようになって、確信をもって仕事を進める事ができています。

実装した機能が使われなかった時にも「なにが悪かったんだろう?」という風に雲をつかむような所から始めずとも「ストーリーが間違っていたのか?ストーリーの実現方法が間違っていたのか?」とすぐ次のアクションを始められますね。

UXデザインはクリエイティブの先を照らすライトになる

思い返してみると 所作 が身について確信をもって仕事ができるようになった、というのが一番大きいのかな。
不確実な中でなにかを進める時に少しでも遠くまで光を照らしてくれるライトを手に入れる事ができたのかもしれません。

基礎からしっかりと、しかも160時間もかけて積み重ねを学ぶって、なかなか社会人になったらできないですよね。
明日から役にたつ講座ってたくさんあるとは思うんですが、一万時間の法則とか言うように反射神経レベルでなにかを身につけるには大学というスキームは本当に素晴らしいと思います。

実務ではいわゆるメソッドは使っていない訳ですけど、普通に仕事をしているといくらでも役に立つ機会はくる訳です。その時にメソッドだけを学んだ人と所作を身につけている人ではとっさに使えるかはぜんぜん違うと思うんですよね。
というか、人の活動ってかならず「だれか」という対象がいるわけで、 UXデザインを正しく学ぶ事、それを自分の日々の業務に活かしていく事、、、ってのは当たり前なのだと思います。

UX デザイナーか?と聞かれると NO と答えます。でも「良いサービスを作れていますか?」と聞かれたら自信を持って YES を答えられます。